力学における最も簡単なモデルで取り扱う対象は質量 (mass) を持っていても大きさを持たない 点であり,このような点を質点といいます。
質点は数学的に正確に取り扱えるので,もっと複雑な物体を取り扱うとき,その物体の全質量が集中し,外からの力がまるでその1点に作用しているかのように見える点を考え,物体の運動をこの点の運動と物体内部の運動に分けて調べると便利です。このような点をその物体の質量中心 (center of mass) または重心といいます。
一様な物質でできた線分 ABと円の重心がそれぞれ線分AB の中点と円の中心であることは直観的にも分りやすいと思います。
また,一様な物質でできた三角形の重心は3中線の交点なので,数学でもこの点をこの三角形の重心と定義します。この重心は各中線を2対1に内分します。
三角形ABCの重心Gの位置ベクトルは
で与えられるので,3頂点 A,B,C に等しい質量の質点がある場合に3点全体をひとつの物体と考えたときの重心と一致します。
しかし,四角形など一般の多角形の重心について,これと同じような簡単な公式は存在しないので混同しないでください。
(2021年3月2日改訂)