『否定』(negation)

(D.) Negation (Fra.) négation (Ita.) negazione

でない,排中律,二重否定

 「 でない」を「 である」の否定といい,高校の教科書では 補集合余事象記号との対応や簡潔さなどを考えて と表しますが,この教室では,技術的な理由などから,論理記号 〜 を用いて 〜 と表すこともあります。
 「否定」は無定義用語であると考えるのがふつうだと思います。「 であるというと矛盾する」ことを「 でない」というと定義する方法もありますが,その場合は「矛盾する」という用語の定義が問題になります。
 一般には「 でない」と「偽である」とは同じ意味であるとは限りません。たとえば,
   「ジャックは犯人である(有罪である)」
という主張をとするとき,「は偽である」はジャックが潔白であることを意味し,「でない」はジャックが犯人であるとは言えないことを意味すると考えることができるからです。この2つは,神から見ると同じことですが,裁判官の立場から言えば同じではありません。つまり,「有罪である」の否定「無罪である」は,「有罪であるとは言えない」と言っているだけなので,「潔白である」かもしれないが「有罪である」可能性もあると言っていることになります。
 このように,「でない」と「は偽である」とが同じであるとは限らないということは,真であるとも偽であるとも言えない主張があることを意味しますが,高校で学ぶふつうの論理学では,真であるか偽であるかのどちらかであり,かつ,真であるか偽であるかが明確な主張だけを命題と呼び,いろいろな命題の間の真偽の関係だけを調べるので,論理学においては,
   「任意の命題 は真であるか偽であるかのどちらかである」
ことになり,この性質を排中律といいます。
 命題命題関数を含む)のときは,「でない」,「は正しくない」,「は偽である」はすべて同じ意味です。また,
   「 は正しくない」は正しくない
の二重否定 (double negation) といいますが,が命題ならば,の二重否定は「である」と同じ命題です。
  (2019年3月3日改訂)